ホリショウのあれこれ文筆庫

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第223話 思いやり予算以上の在日米軍支出あり

序文・「思いやり」の「見返り」は

                               堀口尚次

 

 思いやり予算とは、防衛省予算に計上されている「在日米軍駐留経費負担」の通称である。在日米軍の駐留経費における日本側の負担のうち、日米地位協定及び、在日米軍駐留経費負担に係る特別協定を根拠に支出されている。

 ニュースや討論番組など報道関係でしばしば日本側負担駐留経費を思いやり予算であるように扱われることが多々あるが、後述のように「思いやり予算」とは在日米軍駐留経費の日本側負担のうちの全部ではなく一部を示すものであり、用語の意義としては誤用である。

 1978年6月、時の防衛庁長官金丸信が、在日米軍基地で働く日本人従業員の給与の一部(62億円)を日本側が負担すると決めたことから始まる。日米地位協定の枠を超える負担に対して、円高や多額の対米貿易黒字などによって日本が急激に経済成長する一方で、財政的な困難に直面し、日本が経済規模に対して軍事面の負担をしないことに不満を持ったアメリカ合衆国連邦政府の負担への特別措置を要請された金丸が、「思いやりの立場で対処すべき」などと導入したことから、日本共産党思いやり予算と呼び、一般にも伝播するようになった。正式名称は、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二十四条についての新たな特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定」

 思いやり予算の内訳は、在日米軍基地職員の労務費、基地内の光熱費・水道費、訓練移転費、施設建設費などである。「思いやり予算」以外にも、日本が拠出している在日米軍関連経費は存在する。防衛省公式サイトの「在日米軍関係経費(平成26年度予算)」によれば、平成26年度の在日米軍関連経費の内訳のうち、いわゆる「思いやり予算」は1,848億円であるが、それとは別に、基地周辺対策費・施設の借料など 1,808億円。沖縄に関する行動特別委員会(SACO)関係費 120億円。米軍再編関係費 890億円。提供普通財産上試算(土地の賃料) 1,660億円(防衛省の予算外、25年度資産)。基地交付金 384億円(防衛省の予算外、25年度予算)が存在する。

 1990年代から、娯楽・保養施設、果ては日本人従業員に貸与される制服や備品までも思いやり予算で処理されている事が指摘され、近年にはさらなる「不適切な支出」が明らかとなり、見直すべきとの声が多く上がってきた。

 因みに2019年度の思いやり予算は、約1974億円で、在日米軍関係経費の合計は、約5800億円を超える。日米安全保障条約は金で買えるものではないはず。

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