ホリショウのあれこれ文筆庫

歴史その他、気になった案件を綴ってみました。

第386話 安部元首相銃撃に思う

序文・宿命と運命

                               堀口尚次

 

 安部元首相が参議院選挙の候補者の応援演説中に凶弾に倒れた。マスコミの報道やテレビのコメンテーターそして政治家までもが、口をそろえて「民主主義への挑戦」だと言うが、私は違和感を感じた。

 挑戦というとポジティブな印象がする。ただの蛮行である。「民主主義の根幹を揺るがす」などの報道も、大げさすぎると思った。犯人は言論を暴力で封殺することが目的ではなく、ただ単に恨みを暴力という形で実行しただけ。本人の証言で「安部元首相の政治信条に対する恨みはない」と報道されている。

 報道によると犯人は、安部元首相が特定の宗教団体と関係があり、その事で安部元首相を逆恨みするようになり、凶行に及んだといういが、これこそ蛮行であることの証だと思う。勿論政治テロは肯定しないが、いわゆる政治犯の中には、法律違反を犯してでも政治的に訴えることを是としている人もいるが、今回の犯行は元首相という超大物政治家が対象だが政治的背景のかけらもない只の蛮行にすぎない。

 また「民主主義の根幹」というが、それは「選挙と言論ということに対する表現」であろうが、安部元首相は立候補者でもなく、言論の封殺どころか生命を封殺されているのだから、まったく別問題だと思う。いわゆる単なる犯罪者であり、民主主義の根幹とは何の関わりもない異常者の犯行である。もし「民主主義の根幹を揺るがし、民主主義に対する挑戦だ」というならば、不断から特定の候補者に対して反対意見を延べていた人物が、選挙期間中にその候補者を殺傷するような事が起きた場合が該当すると思う。

 暴力は世の中から無くならない。だから法治国家においても警察があり、軍隊が必要なのだ。民主主義だから暴力がなくなるのではなく、国家権力による暴力手段〈警察・軍隊〉によって平和が保たれているから国民が暴力から守られているのだ。だからある意味「民主主義は暴力との戦い」なのだと思う。

 凶弾に倒れた安部元首相は、自民党タカ派であり、政治思想の傾向の分類、好戦的で戦争など武力を辞さない姿勢を持つ集団や人物に属し、強硬派ともいわれたその政治信条からいえば「武力を辞さない姿勢」から、凶弾という武力と戦って散ったことは皮肉な結末なのだろうか。

 戦後最長政権を樹立した大政治家・安部元首相のご冥福を祈ります。合掌。