ホリショウのあれこれ文筆庫

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第385話 モールス信号と「トラ・トラ・トラ」

序文・ワレ奇襲に成功セリ

                               堀口尚次

 

 モールス符号(ふごう)は、電信で用いられている可変長符号化された文字コードである。モールス符号を使った信号はモールス信号と呼ばれる。

 アメリカ合衆国の発明家サミュエルフィンレイブリースモールスは、1937年ニューヨーク大学で現在のものと全く異なった符号で電信実験を行い、ジョセフ・ヘンリー教授の指導との協力の下、改良した符号と電信機との特許1840年に取得した。

 モールスの送信機は、機械式スイッチの接点を手動で開閉するものであった。紙テープを事前に穿孔(せんこう)〈穴を開ける〉してそれにより接点を開閉する方式の自動送信機を1846年にベインが発明した。1866年からイギリスチャールズ・ホイートストンが製作した自動送信機が広く使われた。

 国際モールス符号は短点と長点を組み合わせてアルファベット数字記号を表現する。長点1つは短点3つ分の長さに相当し、各点の間は短点1つ分の間隔をあける。また、文字間隔は短点3つ分、語間隔は短点7つ分あけて区別する。

 トラトラトラは、太平洋戦争の始まりである日本軍の真珠湾攻撃が奇襲により開始されることを伝えた電信の暗号略号である。意味は「ワレ奇襲ニ成功セリ」。

 本来はモールス符号「・・―・・〈ト〉 ・・・〈ラ〉を繰り返すものでトラ連送とされた。真珠湾攻撃時には攻撃隊長・淵田美津雄中佐の搭乗する九七式艦上攻撃機から第一航空艦隊司令部〈旗艦空母赤城に宛てて発信された。

 真珠湾攻撃は、奇襲の場合敵の防御が効力を発揮する前に攻撃可能であると空中指揮官が判断した場合には艦攻による対艦攻撃を先行させ、強襲の場合には艦爆による対空防御制圧が先行させる計画になっていたが、「ワレ奇襲ニ成功セリ」はこのうち前者を指す電文となる。従って、これはあくまで攻撃が奇襲によって開始されることを示すものであり、攻撃そのものの成功を意味するものではない。

 のちに、この電文をタイトルとし、真珠湾攻撃を題材とした映画トラ・トラ・トラ!』が作られた。