ホリショウのあれこれ文筆庫

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第718話 サインポールの不思議

序文・床屋さん

                               堀口尚次

 

 サインポールは、理容所を示す細長い円柱形の看板。赤・白・靑の三色の縞模様〈レジメンタル・ストライプ〉が回転する。

 語句そのものは和製英語であり、英語ではbarber’s pole または barber pole と呼ばれる。

 理容所であることを示すもので、3色のサインポールは世界共通のマークであるといわれる。営業中を表すためにサインポールを回す。中に蛍光灯などの照明が入っているものもあり、閉店後は消灯する場合と、回転させずに明かりのみつけている場合がある。また、営業中でも予約客でいっぱいという場合には回転を止めることもある。

 日本のサインポールの模様は、右側に行くにしたがって上がる、いわゆる「Z巻き」が圧倒的に多い。

 ひねりを加えた形が、安土桃山時代ポルトガルから伝来した砂糖菓子の有平糖とよく似ていたことから有平棒〈またはアルヘイ棒〉とも呼ばれる。

 サインポールの由来には諸説あり、かつ明文化された記録が存在しないため、由来の調査は困難である。よって、内容が異なる説があったとしても一概に違うとは言いきれない場合も存在する。

 2005年7月20日に放送されたバラエティ番組『トリビアの泉~素晴らしきムダ知識~』内のコーナー「ガセビアの沼」では、「サインポールは元々中世のイギリスで、当時の理容師が外科医も兼ねていたことから血液を表す赤と包帯を表す白の2色で生まれた」「理容師と外科医を別けるため理容所は赤白に青を加える動きもあったが定着せず」「その後アメリカで建国100周年を機に愛国心を反映して同国の国旗〈星条旗〉のカントンの色である青が加えられたものである」という説を紹介、全国理容衛生同業組合連合会の意見を根拠に、「赤が動脈、青が静脈を表している、というのはガセ」と結論付けた。

 サインポール錯視(さくし)とは、サインポール〈床屋のポール〉のような斜めの縞模様のポールをその軸を中心に回転させると、縞模様が回転の方向ではなく回転軸の方向に動いているように見えるという錯覚である。動く物に対する人の脳の視覚処理には偏りがあることを示すものである。