ホリショウのあれこれ文筆庫

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第887話 二河白道

序文・貪り、執着心、怒り、憎しみを捨てよ。

                               堀口尚次

 

 二河白道(にがびゃくどう)とは、浄土教における極楽往生を願う信心の譬喩(ひゆ)。ニ河譬(にがひ)とも。善導が浄土教の信心を喩(たと)えたとされる。主に掛け軸に絵を描いて説法を行った。

 絵では上段に阿弥陀仏観音菩薩勢至菩薩のニ菩薩が描かれ、中段から下には真っ直ぐの細く白い線が引かれている。 白い線の右側には水の河が逆巻き、左側には火の河が燃え盛っている様子が描かれている。 下段にはこちらの岸に立つ人物とそれを追いかける盗賊、獣の群れが描かれている。

 下段の岸は現世、上段の岸は浄土のこと。右の河は貪りや執着の心〈欲に流されると表すことから水の河〉を表し、左の河は怒りや憎しみ〈憎しみは燃え上がると表すことから火の河〉をそれぞれ表す。盗賊や獣の群れも同じく欲を表す。

 東岸からは釈迦の「逝(い)け」という声がし、西岸からは阿弥陀仏の「来たれ」という声がする。この喚(よ)び声に応じて人物は白い道をとおり西岸に辿りつき、悟りの世界である極楽へ往生を果たすというもの。

 往生とは、大乗仏教の中の成仏(じょうぶつ)の方法論の一つである。現実の仏である釈迦牟尼世尊のいない現在、いかに仏の指導を得て、成仏の保証を得るかと考えたところから希求された。様々な浄土への往生があるが、一般的には阿弥陀仏の浄土とされている極楽への往生を言う。これは極楽往生といわれ、とは極楽浄土にゆく事、とは、そこに化生(けしょう)する事で、浄土への化生は蓮華化生という。

 化生とは生きものの生まれ方を胎生・卵生・湿生・化生と四種に分けた四生(ししょう)の中の一つ。1.胎生 人間や獣のように母の胎(からだ)から生まれる事。2.卵生 鳥類のように卵から生まれる事 3.湿生 虫のように湿気の中から生まれるもの 4.化生 過去の業(ごう)の力で化成して生まれること、天人など。 極楽浄土への往生は、そこに生まれる業の力で化生すると言う。蓮華化生とは極楽浄土の蓮華の中に化生するという意味。

 往生の本来の意味は、仏になり悟りを開くために、仏の国に往き生まれる事である。よって、往生の本義は、ただ極楽浄土に往く事にあるのでなく、仏になる事にある。