ホリショウのあれこれ文筆庫

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第900話 三千大千世界

序文・仏教の世界観

                               堀口尚次

 

 三千大千世界(さんぜんだいせんせかい)は、仏教の世界観における宇宙の単位である。特に大乗仏教においては、一人の仏が教化する世界のことであり、宇宙は無数の三千大千世界から成る。仏教の世界観では、須弥山(しゅみせん)〈古代インドの世界観の中で中心にそびえる山〉を中心として日・月・四大州・六欲天(ろくよくてん)〈天上界の内いまだ欲望に捉われる6つの天界〉・梵天(ぼんてん)などを含む世界を一世界とし、一世界が1,000個集まったものを小千世界といい、小千世界が1,000個集まったものを中千世界といい、中千世界が1,000個集まったものを大千世界という大千世界三千大千世界ともいう。略して三千世界といい、三千界ともいう。

 仏教の世界観では、須弥山を中心としてその周りに四大州があり、さらにその周りに九山八海(くせんはっかい)があるとされる。仏教の世界観では、須弥山をとりまいて七つの金の山と鉄囲山(てつちさん)があり、その間に八つの海がある。これを九山八海という。これを一つの小世界〈一世界〉という。小世界は、下は風輪から上は色界〈欲望を離れた清浄な物質の世界〉の初禅天までの領域であり、左右の大きさは鉄囲山の囲む範囲である。

 1つの三千大千世界は1人の仏が教化できる範囲であるともされるため、1つの三千大千世界を1仏国土ともよぶ。

 我々が住んでいる世界を包括している仏国土〈三千大千世界〉の名前は娑婆(しゃば)である。阿弥陀如来が教化している極楽という名前の仏国土は、サハー世界の外側、西の方角にあるため西方極楽浄土と呼ばれる。薬師如来の東方浄瑠璃世界や阿閦(あしゅく)如来大乗仏教における信仰対象である如来の一尊〉の妙喜(みょうき)世界なども同様にサハー世界の外に存在する。

私見】よく天国を意味する言葉を、日本人は「極楽」というが、これは仏教の世界観からきており、厳密には「西方極楽浄土」である。そしてこれは阿弥陀仏の浄土である。薬師如来の浄土は「東方浄瑠璃世界」であり、阿閦如来の浄土は「妙喜世界」となる。大乗仏教である日本の仏教で、特に鎌倉時代に発展した浄土系〈浄土宗・浄土真宗など〉の宗派が信仰する阿弥陀如来が広く世に広がったため、死後に生まれ変わる浄土が、「阿弥陀仏の極楽浄土」として認識され、今日まで「天国=極楽」と伝わったものと考えられる。