ホリショウのあれこれ文筆庫

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第108話 特定海域について

序文・まさか津軽海峡を中国とロシアの軍艦が通航するとは・・・

                               堀口尚次

 

 テレビ番組で「特定海域」について取り上げていた。「国際海峡」とは、国連海洋法条約によって定義された国際航行を定められた範囲で自由に行える海峡のことであり、日本における特定海域とは、宗谷海峡津軽海峡対馬海峡東水道、同西水道及び大隅海峡の、領海の幅が通常の12海里でなく3海里にとどめられた5つの海峡を指す。

 通常、ある国の領海を外国船舶が通航する際には、沿岸国の平和、秩序または安全を害しないこと(無害通航)が国際法によって義務付けられる。しかし、国際的に重要度の高い海峡が、狭小(きょうしょう)であるために沿岸国の領海に包摂(ほうせつ)されてしまう場合、そこに無害通航の義務を厳格に適用すると海峡の利用が大きく制約されることになり、各国に不利益が生じてしまう。そのため従来、このような国際海峡においては、通常の領海とは異なる取り扱いを行うことが国際慣習法によって承認されてきたほか、条約によっても通航の権利を強く認めてきた(いわゆる「強化された無害通航権」 )。

 しかし、1994年に発効した国連海洋法条約によって、条約発効前は3海里だった沿岸国の領海が12海里に拡大されることになった(一部国家ではすでに12海里であった)。

 上記の様に、本来日本の領海が12海里あることから、上記五つの海峡はすべて完全に日本の領海となる。しかし日本はあえてこれらの海峡を3海里に留めている。テレビ番組の解説者は、同盟国のアメリカが航行するためだと云う。核兵器を搭載した外国の軍艦が当該海峡を通過する場合、日本は国際法上、軍艦の通過は拒否できず、結果として領海内に核兵器が持ち込まれたこととなり、非核三原則の「持ち込ませず」の原則を堅持できなくなる。そこで、海峡上に領海に含まれない海域を残し、核兵器を搭載した軍艦をこの海域上を通航させることによって、こういった事態に対処しようとしたのである。

 そんな現在の状況から、最近になって中国とロシアが軍事演習と称して、津軽海峡を通航したのだ。これは国際法上まったく問題がなく、正当な行為とされる。日本の自衛隊は、この状況をつぶさに把握しているが、日本政府は由々しき問題としている。今後の中国とロシアの動静に注力が必要だ。

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