ホリショウのあれこれ文筆庫

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第312話 延命治療の意味と葛藤

序文・自分の親族となると・・・

                               堀口尚次

 

 延命治療とは、疾病の根治ではなく延命を目的とした治療のことである。対症療法の1つ。

 生命予後不良で根治が見込めない患者に対し、人工呼吸や輸血、輸液などによって延命を図ることを目的とする。医療技術の発達により、意思疎通が不可能な状態で生命だけを維持することが可能になったが、クオリティ・オブ・ライフ〈ひとりひとりの人生の内容の質や社会的にみた『生活の質』のことを指し、ある人がどれだけ人間らしい生活や自分らしい生活を送り、人生に幸福を見出しているか、ということを尺度としてとらえる概念〉や尊厳死の観点からそういった治療を見直す議論が起こっている。

 デメリットとして、延命治療を行った場合、患者はその間余計に苦しむこととなる。また、患者本人に意識がない状態でもただ延命されている状況を見て、家族や友人が苦痛を感じることもある。当然ながら、延命治療であっても医療費は必要であるため、延命すればするほど医療費が嵩んでくるという問題もある。

 また人工透析においては、重度の合併症が理由での中止による死亡において、医師独断でやっていた事例も見られたため、本人の意思確認を重視する様に、日本透析医学会は声明している。

 患者本人が延命を希望しなかった場合、それを文書として示すことで医療機関に対し延命治療の中止を要求することができる。この文書はリビング・ウィル〈生前の意思〉と呼ばれ、尊厳死の問題とあわせて論じられることも多い。

 安楽死とは、苦痛を与えずに死に至らせることである。一般的に、終末期患者に対する医療上の処遇を意味して表現される。安楽死に至る方法として、積極的安楽死と、消極的安楽死の2種類がある。また、安楽死の別表現として、尊厳死という言葉がありこれは、積極的安楽死と消極的安楽死の両方を表現する場合と、安楽死を本人の事前の希望に限定して尊厳死と表現する場合がある。

 家族の意思で延命治療がなされるのだが、本人の意思が確認できない場合にその意味が問われ、家族の葛藤が生まれるのだろう。