ホリショウのあれこれ文筆庫

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第745話 従五位下徳川三河守藤原家康朝臣

序文・武士の権威ある肩書

                               堀口尚次

 

この名前を分解して解析すると、

 

①「従五位下(じゅごいのげ)」・・・位階

②「徳川」・・・姓

③「三河守(みかわのかみ)」・・・官位→三河国の国主〈名誉職〉

④「藤原」・・・(朝廷の一大勢力の名)

⑤「家康」・・・名

⑥「朝臣(あそん)」・・・684年に制定された八色の姓(やくさのかばね)の制度で新たに作られた姓(かばね)で、上から二番目に相当する。 上から一番目の真人(まひと)は、主に皇族に与えられたため、皇族以外の臣下の中で事実上、最も上の地位にあたる。

 

官位が得られるのは、源平藤橘(げんぺいとうきつ)……つまりは源氏か平氏藤原氏橘氏の出身者に限られていた。

 

日本の名字(みょうじ)は、元来「名字(なあざな)」と呼ばれ、中国から日本に入ってきた「字(あざ)」の一種であったと思われる。公卿などは早くから邸宅のある地名を称号としていたが、これが公家・武家における名字として発展していった。近世以降、「苗字(みょうじ)」と書くようになったが、戦後は当用漢字で「苗」の読みに「ミョウ」が加えられなかったため再び「名字」と書くのが一般になった。

 

「名字」と「姓」又は「氏」はかつては異なるものであった。

たとえば清和源氏新田氏流を自称した徳川家康の場合は、「徳川次郎三郎源朝臣家康」あるいは「源朝臣徳川次郎三郎家康」となり、「徳川」が「名字」、「次郎三郎」が「通称」、「源」が「氏(うじ)」ないし「姓〈本姓〉」、「朝臣」が「姓(かばね)」〈古代に存在した家の家格〉、「家康」が「諱(いみな)」〈本名、実名〉となる。