序文・キャッチしてもワンバウンドではダメ!
堀口尚次
振り逃げとは、野球において、捕手が第3ストライクが宣告された投球を正規に捕球できなかった場合に、三振で直ちにアウトになることを免れた打者が一塁への進塁を試みるプレイを指す。この名称は便宜的につけられたものであり、正式名称は存在しない。
打者がストライクを3回宣告されると、その打者には三振が記録される。しかしながら、一塁に走者がいない、もしくは二死の状況で、捕手が第3ストライクにあたる投球を正規に捕球『ここでいう「正規の捕球」とは「投手のインフライト〈ノーバウンド〉の投球を捕手の手またはミットでしっかり受け止め、かつそれを確実につかむこと」である。つまり、捕手が投球を確実につかめなかったときはもちろんのこと、打者の空振りの前または後に地面に触れた投球を捕手が手またはミットで確実につかんでも、正規の捕球には該当しない。』できなかった場合には、打者は一塁への進塁を試みることができる。このとき打者をアウトにするには、打者が一塁に到達する前に打者または一塁に触球しなければならない。打者がアウトにならずに一塁に到達すると、走者として一塁を占有することができる。
打者が振り逃げを試みることのできる場面においては、球審はその投球を捕手が正規に捕球したかどうかにかかわらず「ストライク・スリー」と宣告し、「ストライク・バッターアウト」のような宣告は用いない。ただし、正規に捕球がなされていなければ、「ノー・キャッチ」を宣告することはできる。また、塁審や両チーム、観客に「振り逃げできる状態である」ことを示すための何らかの動作を行う。例えば、右手で水平に指一本を伸ばして一塁方向を指す〈上向きに挙げるとアウトと誤解されるため〉、右手を開いて挙げる〈握って挙げるとアウトと誤解されるため〉などの動作が見られる。
打者が三振を喫したにもかかわらず出塁が許されるという根底には、1つのアウトが成立するためには攻撃側の失敗〈つまり三振〉のみでは不十分で、守備側もなすべきこと〈正確な捕球〉をしなくてはならないという考えがある。
特異な例として、プロ野球での「振り逃げ3塁打」や、高校野球での「振り逃げ3ラン」などが記録されている。