ホリショウのあれこれ文筆庫

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第831話 無尽

序文・講などから発展

                               堀口尚次

 

 無尽とは、日本の金融の一形態である。複数の個人や法人等が講等の組織に加盟して、一定または変動した金品を定期または不定期に講等に対して払い込み、利息の額で競合う競(せ)りや抽選によって、金品・物品の給付を受けるものである。

 無尽は、金銭の融通そのものを目的にするものと、特殊な目的のために金銭または金銭以外の物品の融通をするものの2つがある。発起人や被救済者者が確定している、あるいは共同設立・共同融通である場合は、親無尽と呼ばれる。一方、参加者の相互救済を目的とする親無し無尽もある。

 無尽の仕組みは、一定の口数と金額を決めて定期的に掛金を払い、一口ごとに抽選・入札・談合などを通じ、掛金を払った者に対して物品を与える〈物品無尽〉、もしくは金銭を与えるというものである。金銭・物品の分配方法には、抽籤(ちゅうせん)、入札、双方を用いるという3つの方法がある。抽籤では、集金額から経費を差し引いた金額を交付する。入札は「最低入札者を落札者とする」「講員の掛金および掛戻金の合計額と、落札者の取得金額との差額を入札する」「割増金、または利子に対して入札し、多額の割増金または高利の利子支払のできる者を落札者とする」という方法がある。

 一般的に、関東地方では無尽あるいは無尽講、関西地方では頼母子(たのもし)あるいは頼母子講と呼ばれることが多い。地域によって名称は異なり、沖縄県奄美群島では模合(もあい)という。

 21世紀となった現在でも、日本各地〈主に農村・漁村地域〉に、無尽や頼母子、模合と呼ばれる会・組織が存在している。メンバーが毎月金を出し合い、積み立てられた金で宴会や旅行を催す場合もあれば、くじに当たった者〈くじと言いながら実際は順番であることが多い〉が金額を総取りする形態のものもある。多くは実質的な目的よりも職場や友人、地縁的な付き合いの延長としての色彩が強く、中には一人で複数の無尽に入っている人もいる。沖縄県では県民の過半数が参加していると言われるほか、九州各地や山梨県福島県会津地方、岐阜県飛騨地方、愛媛県今治市などでもよく行われている。