序文・南無八幡大菩薩
堀口尚次
八幡神(はちまんしん)は、日本で信仰される神で、清和源氏、桓武平氏など全国の武家から武運の神〈武神〉「弓矢八幡」として崇敬を集めた。誉田別命(ほんだわけのみこと)とも呼ばれ、応神天皇と同一とされる。また早くから神仏習合がなり、八幡大菩薩と称され、神社内に神宮寺が作られた。
現在の神道では、八幡神は応神天皇〈誉田別命〉の神霊で、欽明天皇32年大神比義命(おおがのひぎのみこと)によって、宇佐の地に示顕したと伝わる。応神天皇〈誉田別命〉を主神として、比売神(ひめがみ)、応神天皇の母である神功皇后(じんぐうこうごう)を合わせて八幡三神として祀っている。
明治元年神仏分離令によって、全国の八幡宮は神社へと改組されたのに伴って、神宮寺は廃され、本地仏や僧形八幡神の像は撤去された。また仏教的神号の八幡大菩薩は明治政府によって禁止された。しかし神仏分離後も八幡大菩薩の神号は根強く残り、第二次世界大戦末期の陸海軍の航空基地には「南無八幡大菩薩」の大幟が掲げられたり、「八幡空襲部隊〈八幡部隊〉」を名乗った部隊もあった。また、航空機搭乗員〈特に特攻隊員〉の信仰を集めたりもした。1944年に製作された、航空機搭乗員を描いた映画「雷撃隊出動」の中でも、出撃の際に八幡大菩薩の旗を振るシーンが見られる。
八幡宮は、八幡神を祭神とする神社。八幡神社、八幡社、八幡さまとも表記・呼称される。全国に約44,000社あり、大分県宇佐市の宇佐神宮を総本社とする。
なお清和源氏〈源頼信以降〉により勧請創建された八幡宮も多い〈上野國一社八幡宮など〉。八幡宮の発祥地は、大神比義命が創始した初代大宮司となった宇佐八幡宮であり、全国の八幡宮の総本社である。
いわゆる五所別宮〈筑前大分八幡宮、肥前千栗八幡宮、肥後藤崎八幡宮、薩摩新田神社、大隈正八幡宮〉が分布する様に、古くは九州地方信仰圏を形成していた。近代社格制度においては宇佐神宮、石清水八幡宮、筥崎宮(はこざきぐう)、鹿児島神功の四社が官幣大社の社格に列し、特に宇佐神宮、石清水八幡宮、筥崎宮の三社が日本三大八幡宮とされる。
尚、鳩は世界的にみて「平和のシンボル」とされるが、日本では鳩が八幡神の神使(しんし)とされてきた。八幡神は軍神なので平和とは結びつかず、武士の家紋ともなった。