ホリショウのあれこれ文筆庫

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第996話 ういろう

序文・外郎

                               堀口尚次

 

 ういろう〈漢字表記・外郎〉は蒸し菓子で和菓子の一種。「外良」「ういろ」「うゐろ」「ういらう」などの表記が用いられることもある。外郎餅(ういろうもち)とも言う。

 ういろうは、典型的には米粉などの穀粉に砂糖と湯水を練り合わせ、型に注いで蒸籠(せいろう)で蒸して作る。穀粉には米粉うるち米、もち米〉、小麦粉、ワラビ粉などが用いられ、砂糖には白砂糖、黒砂糖などが用いられる。小豆あん、抹茶など、さまざまなものが加えられることも多い。室町時代のころから存在する黒砂糖を用いた「黒糖ういろう」が本来の姿と考えられている。

 ういろうの起源については以下の2説が通説となっている。

①江戸時代の百科事典『和漢三才図会』にも見られる、色〈黒色〉が外郎薬(ういろうぐすり)〈透頂香(とうちんこう)〉に似ていることから「外郎(ういろう)」と呼ばれる菓子になったという説。

元王朝の瓦解で博多に亡命した陳宗敬の子、宗奇が足利義満招請で上洛して外郎を献上した際に、口直しに添えた菓子に由来するという説。

以上から、日本におけるういろう発祥の地は、前説を採れば不詳、後説を採れば外郎家初代宗敬の在住した博多、または、2代目宗奇が在住し、ういろうを初めて世に知らしめた京都となる。一方、小田原をういろう発祥の地とする説が唱えられることがあるが、ういろうの元祖を標榜する外郎家の末裔〈小田原外郎家〉が現在、小田原市に存在することから生じた誤解である。小田原外郎家自身もういろう発祥の地を小田原としていない。なお、宗敬が在住した妙楽寺〈福岡県福岡市〉では、「ういろう伝来之地」の石碑が昭和62年に建立されている。また、発祥に関する独自の伝承が存在する地域もある。

 薬品としての「ういろう外郎」は、神奈川県小田原市外郎家で作られている大衆薬の一種。ういろうは、仁丹と良く似た形状・原料であり、現在では口中清涼・消臭等に使用するといわれる。外郎薬(ういろうぐすり)、透頂香(とうちんこう)とも言う。中国において皇帝の被る冠にまとわりつく汗臭さを打ち消すためにこの薬が用いられたとされる。14世紀の元朝滅亡後、日本へ亡命した旧元朝外交官外郎の職であった陳宗敬の名前に由来すると言われている

私見】筆者の地元愛知県では、「大須ういろ〈ういろうではない〉」「青柳(あおやぎ)ういろう」が有名で、それぞれの会社のCMソングは子供の頃にみんなが口ずさんでいた。「青柳」の屋号は尾張藩主・徳川慶勝から贈られたそうな。