ホリショウのあれこれ文筆庫

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第1001話 時効

序文・罪は一生消えない

                               堀口尚次

 

 時効とは、ある出来事から一定の期間が経過したことを主な法律要件として、現在の事実状態が法律上の根拠を有するものか否かを問わず、その事実状態に適合する権利または法律関係が存在すると扱う制度、あるいはそのように権利または法律関係が変動したと扱う制度をいう。 一般には民事法における時効と、刑事法における時効とに大別されることが多い。また、時効が適用されない案件などもある。一部の案件においては時効の期間が非常に短いものもある。

 民法における時効とは、ある事実状態が一定の期間〈時効期間〉継続したことを法律要件として、その事実状態に合わせて権利ないし法律関係の得喪変更を生じさせる制度をいう。144条以下に規定があり、取得時効と消滅時効とに分かれる。

 取得時効、消滅時効のいずれの場合においても、時効期間の経過により時効に基づく効果を起算日にさかのぼって主張する基礎を有することになるが、それは確定的な権利関係の変動をもたらすものではなく、一定の者〈援用権者〉により時効の基づく権利関係の主張〈「援用」〉により効果が発生する。

 刑事法上の時効とは、一定期間公訴が提起されなかった場合に公訴権が消滅する公訴時効と、確定した刑の執行を消滅させる刑の時効がある。一般に刑事事件で「時効」といわれるのは前者である。国によっては公訴時効を刑事責任追及の時効、刑の時効を判決執行の時効という。

 公訴時効とは一定期間公訴が提起されなかった場合に公訴権が消滅すること。

日本では公訴時効完成までの期間は対象となる犯罪の法定刑が基準とされている〈刑事訴訟法250条〉。公訴時効が認められる根拠としては、事実状態の尊重や犯罪による社会的な影響の減少、事件から長期間が経過したことによる証拠の散逸とその結果冤罪を誘発する可能性などがある。しかし、21世紀初頭の段階で、DNA型鑑定など、「過去〈数十年前〉の事件における物的証拠から、確度の高い容疑者特定を可能とする技術」が開発されるようになり、DNA型鑑定が確立される以前の迷宮入りとなった事件の血痕などからもDNA型が判明するようになってきている。他方、DNA型鑑定によって、既に有罪になった者の冤罪が証明された事例も複数ある。