ホリショウのあれこれ文筆庫

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第1010話 忍者・手裏剣・くの一

序文・仮面の忍者赤影

                               堀口尚次

 

 「忍者」は、室町時代から江戸時代の日本で、大名領主に仕え、また独立して諜報活動破壊活動浸透戦術、謀術、暗殺などを仕事としていたとされる。忍者は昭和30年代以降、小説などに使われて普及した呼称である。いわゆる忍者が存在した時代には「忍び」と呼ばれたほか、異名として「乱破(らっぱ)」「素破(すっぱ)〈“スッパ抜き”という報道における俗語の語源〉」「草」「奪口(だっこう)」「かまり」などがあった。

 領主に仕えずに戦毎に雇われる傭兵のような存在もいた。甲賀衆・伊賀衆のような土豪集団もあれば、乱波・透破のようなただのごろつき集団もある。戦には足軽として参加し、夜討ち朝駆けといった奇襲撹乱を得意とした。伊賀・甲賀においては荘園時代から悪党がはびこり、それが後世に忍者と呼ばれる伊賀衆・甲賀衆になる。

 「手裏剣(しゅりけん)」は、日本独自の投てき武器忍者の主要武器のイメージが強いが、武士や武術家の護身用にも用いられた。

 手裏剣には鉄の小棒の片方または両方を鋭く尖らせた棒手裏剣や、十字形や卍形などの鉄板の各辺に刃をつけた車剣などがある。忍者手裏剣は、流派によっても形状が多様で、短刀や剣のような形のもの、カンザシ型のもの、十字形、角まんじ、八方形のもの、折りたたみでできるものなどがあった。

 古武術において一般的に使用されていた手裏剣は、細長い形状の棒状手裏剣だったとされる。棒手裏剣の投てき方法としては、手のひらにのせ、棒手裏剣を中指・人差し指・薬指で挟み、剣尾を親指で押さえ、上段構えから打ち込む方法などがある。この手裏剣は刀の鞘に仕込まれることもあった。

 「くノ一(いち)」は、女を指す隠語。1960年代以降の創作物においては女忍者を指す言葉として広まっている。

 山田風太郎の時代小説『忍法帖シリーズ』をはじめとして、くノ一は小説、テレビドラマ、映画、漫画など多数の創作物に登場するが、近年の研究によれば、男性と同じように偵察や破壊活動を行った女性忍者の存在については史料に記録がない。

 くノ一が女を指すのは、「女」という漢字を書き順で1画ずつに分解すると「く」「ノ」「一」となるためであると思われる。