ホリショウのあれこれ文筆庫

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第765話 ドッペルゲンガー

序文・自己像幻視

                               堀口尚次

 

 ドッペルゲンガーとは、自分自身の姿を自分で見る幻覚の一種で、「自己像幻視」とも呼ばれる現象である。自分とそっくりの姿をした分身。第2の自我、精霊の類。同じ人物が同時に別の場所〈複数の場合もある〉に姿を現す現象を指すこともある〈第三者が目撃するのも含む〉。超常現象事典などでは超常現象のひとつとして扱われる。ドイツ語: Doppel〈英語: doubleと同語源〉とは、「二重」「生き写し、コピー」という意味を持ち、独: Doppelgängerを逐語訳すると「二重の歩く者」「二重身」となる。 英語風に「ダブル」と言うこともあり、漢字では「復体」と書くこともある。

ドッペルゲンガー現象は、古くから神話・伝説・迷信などで語られ、肉体から霊魂が分離・実体化したものとされた。この二重身の出現は、その人物の「死の前兆」と信じられた。18世紀末から20世紀にかけて流行したゴシック小説作家たちにとって、死や災難の前兆であるドッペルゲンガーは魅力的な題材であり、自己の罪悪感の投影として描かれることもあった。

 ドッペルゲンガーの特徴として、『ドッペルゲンガーの人物は周囲の人間と会話をしない。・本人に関係のある場所に出現する。・ドアの開け閉めが出来る・忽然と消える・ドッペルゲンガーを2回見ると見た人も死ぬ』などがあげられる。

 同じ人物が同時に複数の場所に姿を現す現象、という意味の用語ではバイロケーションと重なるところがあるが、バイロケーションのほうは自分の意思でそれを行う能力、というニュアンスが強い。つまりドッペルゲンガーのほうは本人の意思とは無関係におきている、というニュアンスを含んでいる。

 医学においては、自分の姿を見る現象〈症状〉は「autoscopy」、日本語で「自己像幻視」と呼ばれる。 自己像幻視は純粋に視覚のみに現れる現象であり、たいていは短時間で消える。現れる自己像は自分の姿勢や動きを真似する鏡像であり、独自のアイデンティティや意図は持たない。しかし、まれな例としてホートスコピーと呼ばれる自身を真似ない自己像が見えたり、アイデンティティをもった自己像と相互交流する症例も報告されている。ホートスコピーとの交流は友好的なものより敵対的なことのほうが多い。