ホリショウのあれこれ文筆庫

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第857話 救急車は無料?!

序文・公の利益とはなんぞや

                               堀口尚次

 

 日本の救急車は無料だが、海外では有料の方が多いそうだ。近年では、救急車を病院までのタクシー代わりに要請したり〈今日入院するから病院に連れていって等〉、意識もしっかりしていて自分で正常に歩ける程度の軽症〈蚊に刺されてかゆい・日焼けして肌がヒリヒリ痛い等〉での救急要請が半数を占め問題になっている。総務省消防庁によると、2020年に出動したうち、約半数が救急車での搬送が必要ない救急車要請であった。

 上記の理由により以前から増加していた救急出場が新型コロナウィルスの流行で更に増加し、救急隊が常に出場している状態となり、消防署にほとんど帰ることができない問題 が発生している。

 救急車の出動回数が増えているのは前述の通りで、本来非常時にのみ運用されるべきはずであった緊急走行が現在では慢性的に行われ、サイレンが市民生活に与える影響もそれに伴い増大している。サイレンが人々に負担を与えるものであることが住民意識調査により示されている。救急車がうるさいという事象は、歌謡曲の歌詞にもなっている。一方、消防庁側は新たに騒音対策を検討する予定はないとしている。そのため、騒音を巡る住民とのトラブルとして、搬送中の救急車に自転車が投げつけられるなど事件に至るケースもある。

 このような様々な問題から、「救急車の有料化」が提起されているが、考えてみれば救急車はそもそも税金で運用されているのだから、無料ではないのだ。税金を納めていない人が救急車を使用すれば、本来の意味で無料といえよう。

 救急車を安易に利用する人や、救急車のサイレンを騒音と捉える人がふえるということは、公共心が失われていることになり、自分さえよければという身勝手な生き方をする人が増えた証拠だろう。

 「公園で遊ぶ児童の声がうるさい」「保育園・幼稚園がうるさい」など、昔では考えられなかったクレームが発生する世の中になったものだ。話題になったモンスターペアレントもそうだし、小売業〈サービス業〉へのクレーム〈ハラスメント〉も、年々度を越している。「お客様は神様」であった高度経済成長の時代は終った。売る方も買う方もお互いを思いやり、相見(あいみ)互いの精神で乗り越えたいものだ。「困ったときはお互い様」を標榜してもよいが、けしてふりかざしてはいけない。人間の真価が問われる時代に突入したのかもしれない。