序文・心霊スポット!?
堀口尚次
伊世賀美隧道(いせがみずいどう)は、愛知県豊田市の伊勢神(いせがみ)峠にあるトンネル。通称として旧伊勢神トンネルとも呼ばれる。
明治30年11月竣工。開通当時の荷物輸送の主役であった飯田街道の伊勢神峠に建設された全長308メートル、高さ3.3メートル、幅員3.15メートルのトンネルで、標高705メートルに位置する。断面の大きさは軍隊の大砲が通過できることを基準としたという。また、当初はレンガ造のトンネルとして設計されたが、現地の地層や湧水による崩落の可能性から、石造のトンネルに変更された。トンネルは花崗岩造でルスチカ積みの付柱(つけばしら)に迫石(せりいし)を二重の馬蹄形に組み上げた断面形状をしている。平成12年9月26日には国の登録有形文化財となった。
このトンネルの完成によって荷馬車の往来が可能となったが、モータリゼーションが進んだ昭和30年代には荷物を満載したトラックがトンネルを通過できず、現地で一旦荷を下ろしてから通り抜けたり、定期バスが錘によって車高を低くしてから通ることもあった。
昭和35年に現在の伊勢神トンネル〈当初は有料道路であった。昭和46年から無料開放。延長1,245メートル〉が開通したためこの古いトンネルはほとんど使われていない。なお、トンネル東側には大正6年に作られた旧 郡界橋〈コンクリートアーチ橋〉がある。
令和4年に行われる世界ラリー選手権ラリージャパン2022において、本隧道を含む区間がSS〈スペシャルステージ〉2と5「伊勢神SS “Isegami's Tunnel”」として指定された。ところが「未舗装路」と「トンネル」という悪条件が重なり、かなりリスキーなコースとなった。特に後続車になればなるほど前走者の巻き上げた砂塵によって視界不良となる中で走らざるを得ず、さらにはこの狭さの中で車体自体も左右に振られながら走っていく状況へと追い込まれた。
令和5年も引き続き世界ラリー選手権ラリージャパン2023のSS区間として設定された。前年の問題を解決するため、舗装工事が行われた。
尚、この旧伊勢神トンネルは、東海地方屈指の心霊スポットとも言われている。江戸時代に峠で追剥ぎに殺された者の霊が出没すると聞いたころがある。