ホリショウのあれこれ文筆庫

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第881話 小人プロレス

序文・職業選択の自由

                               堀口尚次

 

 ミゼットプロレスは、小人(こびと)のレスラーが試合をするプロレス。通称「小人プロレス」。闘う人をミゼットレスラーと呼んでいる。メキシコでは小人症に限定せず低身長のレスラーをミニエストレージャと呼んでいる。日本では全日本女子プロレスで前座として行われていたのが有名。

 1960年代前半に数回、日本プロレスと関わりのあったプロモーターが、アメリカのミゼットレスラーを招へいして「小人プロレス国際試合」もしくは「小人国プロレス大会」と称し、ミゼットプロレス中心の興行を独自で打った記録が残っている。その際には前座で日本プロレスの選手も出場し、テレビ放映もされた。全日本女子プロレスが旗揚げされた際、ミゼットプロレスは興行のメインとして行われ、女子プロレスが前座扱いとされていたが、マッハ文朱がデビューして人気を得てからはメインは女子プロレスに移って行った。

 ミゼットレスラー達は「自分達は笑われているのでは無い、笑わせているんだ」という自負を持っていた。実際に「自分の技に笑って1人くらい死ぬ人がいれば本望」と発言したミゼットレスラーもおり、記録に残っている。かつては低身長症者は奇形の如く扱われ、就職などで差別されることも多かったことからミゼットプロレスは低身長症の者にとって生活の糧を得る重要な就職口の1つであった。試合がない時には、テレビ局などからの依頼を受けて、小型の着ぐるみを担当するスーツアクターの仕事もこなしていた。

 身体的ダメージが蓄積されて身体障害を負うなど健康を害する選手も多く、リスクに見合った金銭的な評価も期待しづらい上、成長ホルモン治療の普及により低身長症の一部が治療可能になり低身長人口自体が減った事から、後継者難に悩まされている〈全日本女子が経営難になる前は、秩父市に存在した全日本女子の施設の管理人と言う形で引退後の生活を保障されていたが現在は施設も存在しないため、引退後の保障も無いと言う厳しい状況となっている〉。

 人権団体の抗議でテレビから排除された・小人プロレスそのものが潰されたという風説が流布されているが、どちらもデマである。団体は存続しているが、全日本女子プロレスの倒産や競技人口の極端な低下により興行を維持できなくなったのである。