ホリショウのあれこれ文筆庫

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第908話 名古屋市電の終着駅は海底

序文・余生は漁礁として活躍

                                  堀口尚次

 

 名古屋市は、名古屋市が経営していた路面電車である。名古屋市交通局が事業を行っていた。 明治31年に名古屋電気鉄道によって日本で2番目の電気鉄道として開業され、昭和49年3月31日に全廃された。

 京都電気鉄道〈のち京都市に買収されて京都市電となる〉に次いで日本で2番目の電気鉄道である、名古屋電気鉄道をその嚆矢(こうし)〈始め〉とする。同社は市内路線のほかに、アメリカのインターアーバン〈都市間電車〉のような種類の路線として「郡部線」〈現在の名鉄犬山線津島線など〉と呼ばれる郊外鉄道線も建設した。

 しかし大正3年9月、不況下における高額の運賃に不満を持っていた市民が「電車賃値下問題市民大会」を催し、大会終了後市民が暴徒化して電車・施設への焼き討ちを行って、郡部線電車のターミナル駅であった柳橋駅名古屋駅のやや南東〉が全焼、電車23両が損傷する事件が発生した。これを機に名古屋市でも市内電車の買収に動き、大正11年に名古屋電気鉄道から市内線を買収して名古屋市が誕生した。

 昭和35年半ばから電力料金や設備維持費が増加し、経営を逼迫(ひっぱく)するようになる。また自動車の増加に伴い定時運行が困難となったため、市では地下鉄網を整備する代わりに市電を撤去することとなった。昭和49年、市電は全廃された。現在は、名古屋市交通局日進工場の一角に「レトロ電車館」があり、当時使用されていた電車3両が保存展示されている。

 市電の廃止が進められた昭和44年から昭和47年にかけて、余剰となった車両80両を工漁礁(ぎょしょう)として伊良湖沖に沈めたことが記録として残されており、2000年には『そこがが知りたい特捜!坂東リサーチ』、2023年には『千原ジュニアの愛知当たりまえワールド☆~あなたの街に新仰天!~』でそれぞれ海底に設置された市電車体の一部が潜水撮影によって確認されている(2000年の取材時に引き揚げられた部品は市営交通資料センターに保管・展示された)。

私見】昭和38年生まれの筆者は、名古屋市内に住んでいなかったこともあり、現役の市電を観た記憶がない。但し、レールが敷かれていた痕跡の道路はいたるところで確認できた。過日「レトロ電車館」でノスタルジックに酔いしれた。