ホリショウのあれこれ文筆庫

歴史その他、気になった案件を綴ってみました。

第950話 名古屋コーチン

序文・日本三大地鶏

                               堀口尚次

 

 名古屋コーチンとは、愛知県特産であるの卵肉兼用種である。後に「名古屋種」と改名されたが、現在も「名古屋コーチン」のままで流通している。明治38年に日本家禽協会によって国内初の実用鶏種として認定された。

 名古屋コーチンは、明治時代初期に愛知県で作出された鶏で、平成11年に制定された地鶏肉の日本農林規格にも在来種〈明治時代までに国内で成立し、又は導入され定着した鶏の品種〉にあげられている。

 現在、市場に流通している肉や卵のほとんどは、愛知県畜産総合センター種鶏場から供給された種鶏〈親鶏〉から産まれた名古屋コーチンによって生産されたものである。名古屋コーチンは愛知県とその近隣県を中心に日本全国で飼育されていて、その肉や卵は高級食材となっている。卵をよく産み、肉も美味しいことから、「卵肉兼用種」に分類されている。比内地鶏、さつま地鶏と並ぶ日本三大地鶏の一つである。

 愛知県の養鶏は、江戸時代末期に尾張藩士によって鶏の飼育が行われたのが起源といわれ、明治時代以降も産業として定着、発展し、今日に至っても全国有数の養鶏業の盛んな土地である。この愛知県の養鶏の発展とともに歩んできたのが、名古屋コーチンである

 明治15年頃に旧・東春日井郡池林村池之内〈現在の愛知県小牧市池之内〉で、元・尾張藩藩士の海部荘平と名古屋市内で養鶏業を営んでいた弟の海部正秀が、中国から入手したバフコーチン岐阜地鶏を交配して産まれた鶏から、名古屋コーチンは作出された。名古屋コーチンは、肉質、産卵能力が良く、強健で温厚であるという長所を兼ね備えていたことから、評判になり、尾張地方だけでなく、京都、大阪を中心に全国に広まった。

 コーチンはニワトリの品種の一つである。コーチンという名前は元々は中国語の「九斤黄」という名前から来ていて、これが誤ってベトナム南部に対する当時の呼称コーチシナ〈交趾支那〉やインド南部のコーチンと混同された。「斤」とは重さの単位であり、現地中国では大型のニワトリ全般や、あるいはそれを使った料理ですら「九斤黄」と呼ばれている。

私見】「名古屋めし」として知られる「山本屋本店・味噌煮込みうどん」の名古屋コーチン入りは、値段も高いが格別の味だ。

名古屋コーチン発祥の地・小牧 筆者撮影