序文・ルールにない決まり事
堀口尚次
サッカーでは、フェアプレーの観点から、相手選手が蹴り出したボールは返すというのが紳士協定として結ばれており、そのフェアプレーに拍手が送られるというのが通常だ。
そもそも「紳士協定」とはウィキペディアによると、いわゆる不文律〈暗黙の了解〉の1つで、国家や団体、および個人間における取り決めのうち、公式の手続きや文書によらず、互いに相手が約束を履行することを信用して結ぶものをいう。であることからサッカーの場合、審判の判断によらず、選手同士の暗黙の了解であり、フェアプレイを担保するための美しい決め事なのだ。
しかしながらこれは、あくまでも紳士協定であり、ルールではないので審判が判定を覆(くつがえ)すことはできない。だから紳士協定を破ったとしても審判は口出しできないのだ。
ところが、先週のサッカーJリーグの試合で、とんでもない事が起きてしまった。なんとこの紳士協定を破ってゴールを決めてしまったのだ。ゴールを決められたチームの監督が猛抗議をしたが、前述の様に審判は介入できないので判定は覆せなかった。そこで両チームの監督が話し合った末、ゴールを決められたチームも1ゴールできる特別処置が取られることになり一件落着した。
状況を整理して考えるとこうだ。サッカーでは、試合中に選手が倒れ込んだりして、プレイ継続が不可能な状態の選手が発生すると、見方でも相手側でもボールを一旦ピッチの外へ軽く蹴り出す。このことでゲームが一旦休止する。これは審判の判断によるものではなく、両チーム選手が自発的に行う行為として広く認識されていいる。怪我や体調不良の原因が解決〈選手交代を含め〉すると、ゲームが再開し、スローイングされたボールは、ボールをピッチの外へ出したチームのゴールキーパーまで戻され、ゴールキーパーのキックからある意味本当の意味での試合再開となる。これはルールブックにはないが、サッカーでの「紳士協定」として定着し、フェアプレーとして観客からの賞賛も得ているのだ。
今回Jリーグで起こったことは、チーム・サポーターを含め批判などが流布されているが、当該チームは謝罪などもあり和解している。ルールを守るのは当然のことだが、ルールにはないが、紳士としての振る舞いも問われるのだ。