序文・助役
堀口尚次
副市町村長は、市町村において市町村長を補佐し、その補助機関たる職員の担任する事務を監督する特別職の地方公務員である。市町村長が欠けたときにはその職務を代行する。東京都の特別区に置かれる副区長も同等の役職である。副区長と合わせて副市区町村長と総称する場合もある。
旧制度の助役の定員は1人とされていたが、市町村合併や行政事務の拡大によりマネジメント機能の強化が課題になっていた。
地方分権や地方行政改革の流れに沿い、また市町村長の市町村運営・政策立案体制〈トップマネジメント〉を強化・再構築するべきとの地方制度調査会〈内閣総理大臣の諮問機関〉の答申を受け、従前の助役の権限の強化・明確化を目的として、助役を廃して新たに副市町村長が設置されることになった。
従前の制度では助役は原則として定員1人とされていた。また、助役の職務は、市町村長の補佐および職員の事務の監督、市町村長の職務を代理する、といったことのみが規定されていた。また、収入役を置かない市町村では、助役がその職務を兼ねることができた。
なお、旧制度の下でも、札幌市、仙台市、横浜市、京都市、福岡市、上越市〈1999年7月から2002年3月31日まで〉など一部の市では対外的に副市長の呼称を用いていた。無論、法的・正式には助役であり、条例などでは助役と呼ばれ、その権限も助役と同じであった。
副市町村長制度では定数は条例で任意に定めることができるとされた〈第161条〉。また、長の補佐や職員の事務の監督だけでなく、政策及び企画を担任すること、長の事務の一部につき委任を受けて事務を執行できることが明確化された〈第167条〉。
なお、従前の制度では条例で助役と収入役を兼掌させることが可能であったが、改正地方自治法では副市町村長と会計管理者の兼掌は認められていない。
副市町村長は市町村長が指名し、市町村議会の同意を得て選任される。このため、市町村長と市町村議会の多数派が対立している場合、副市町村長が任命できない事態が起こりうる。多くの市町村では、当該自治体の幹部職員から指名されることが多いが、都道府県庁からの出向者や中央省庁のキャリア官僚を副市町村長として受け入れるケースもある。