ホリショウのあれこれ文筆庫

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第465話 統合幕僚長

序文・戦前の日本軍の欠点を踏まえてか

                               堀口尚次

 

 統合幕僚(ばくりょう)長は、統合幕僚監部の長であり、自衛官の最高位者。階級は陸将、海将または空将のいずれかで、陸上幕僚長海上幕僚長または航空幕僚長の中から持ち回りで選出されるが、元の陸上幕僚長海上幕僚長航空幕僚長と兼任せず、それらの後任として任命される。警察庁長官及び各省事務次官と同等の政令指定職8号。 

 外国軍における統合参謀総長かつ統合軍司令官の役割も併せ持つ。陸海空の自衛隊の運用に関し一元的に防衛大臣を補佐し、統合幕僚監部の所掌事務に係る大臣の指揮命令は、全て統合幕僚長を通じて行う〈統合幕僚監部の所掌事務に係らないものは、従来通り、陸海空各幕僚長を通じて行う〉。有事の際には、フォースプロバイダー〈練度管理責任者〉の陸上幕僚長海上幕僚長航空幕僚長から提供された各部隊を、自衛官最高位のフォースユーザー〈事態対処責任者〉として運用し、陸自の陸上総隊司令官や方面総監、海自の自衛艦隊司令官や地方総監、空自の航空総隊司令官に大臣の命令を執行することになる。法形式上は、防衛大臣が指揮命令をし、統合幕僚長は大臣の補佐及び命令の執行をするが、実質上は統合幕僚長の指揮と言える。また、統合幕僚長は職務を行うにあたり、陸海空各幕僚長に対し、必要な措置をとらせることができる。

 ちなみに、防衛事務次官は、特別職国家公務員における官職及び役職の一つであり、自衛隊員に含まれる。ただし、同じ自衛隊員〈自衛隊構成員〉でも、いわゆる「制服組」〈武官〉の自衛官には含まれない。防衛省〈旧:防衛庁〉の事務方のトップ。国家行政組織法にもとづき、1人が置かれる。

 戦前の日本軍は、陸軍と海軍の組織が「陸軍省」と「海軍省」に分かれており、参謀も陸軍は「参謀本部」であり、海軍は「軍令部」と別々に独立していた。大本営の中も陸軍と海軍は分かれており、合同した作戦の遂行に支障をきたしていた。

 こうした過去の反省点もふまえてなのか、現在の自衛隊では「陸・海・空」自衛隊を統括する「統合幕僚長」がおかれている。そして自衛隊・武官〈制服組〉のトップとし君臨する。そしてシビリアンコントロール文民統制〉の観点から、自衛官・文官のトップとして防衛事務次官が君臨し、防衛大臣を補佐している。当然ながら自衛隊の最高指揮監督権者は、内閣総理大臣である。