序文・退官手当や恩給への配慮
堀口尚次
ポツダム進級とは、大日本帝国陸軍、大日本帝国海軍が1945年8月15日のポツダム宣言受諾後に軍人の階級を一つ進級させたこと。退官手当や恩給がなるべく多くもらえるようにするために行った。ポツダム進級で昇進した階級は、ポツダム少尉、ポツダム少佐など、「ポツダム」を階級の前に入れた俗称で呼ばれる。佐官以下だけが対象とされ、将官の進級はないとされるが、1945年11月1日中将へ進級した三名もポツダム中将と呼ぶ。
ポツダム少尉とは、ポツダム宣言受諾後に戦闘が基本的に終了した8月15日から11月30日まで継続した陸軍省と海軍省によって、この間の日本軍において少尉に任官した軍人の通称である。全員が1階級昇進して除隊した〈この期間の昇進をポツダム進級と呼ぶ〉。主に、学徒動員や士官学校の士官候補生などが、これによって士官とされる少尉に任ぜられた。人数が多く、任官者が自嘲(じちょう)的に自らを「ポツダム少尉」と呼んだことからこの名称が広まった。
このような昇進は少尉に限ったものではないが、少尉が士官と認められる最低の階級〈それより下の兵とは大きく軍内での扱いが異なった〉だったことや、学徒出陣によって、見習士官〈身分上は士官学校生と同等〉の多くが従軍期間に関わらず少尉とされた。士官が退官手当や恩給の支給額において〈下士官よりも〉有利になるとの配慮からとされている。
大学生からの学徒出陣者の多くは「ポツダム少尉」になってから復学し、大学卒業後に要職に就いた。現役軍人の大半が公職追放されたのに対して学徒出陣者は公職追放の対象とならずに戦後に公務員になれたために上級公務員の中には多くのポツダム少尉が含まれることになった。
以上の経緯から、制度の改正によって何らかの資格や免許を容易に得ることを、「ポツダム○○」と呼ぶ場合がある。
現在の「二階級特進」は、自衛官・警察官・消防吏員・海上保安官・刑務官・入国警備官といった職務階級が明確な職業において、殉職に伴って在職階級から二段階昇任させる制度または慣行で、名誉・叙勲・その他の遺族に対する補償も進級した階級に基づきなされる。