ホリショウのあれこれ文筆庫

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第839話 三下と鉄火巻

序文・博徒が食べていた

                               堀口尚次

 

 三下(さんした)とは、半丁打(はんちょううち)〈サイコロを使った賭博〉の仲間の内で下っ端の者を意味する言葉である。三下奴とも。また博打打の仲間でなくても下っ端の者を指したり、単に取るに足らない者を指す場合にでも三下という言葉が使われる場合がある。

 類義語としての上位に貸元〈半丁賭博場の経営者〉、代貸(だいがし)〈貸元の代わりを務める人〉、出方(でかた)〈元は芝居茶屋の接客担当〉がおり、貸元が最上位である。

語源は、博打が行われるさいの振られたサイコロの目数がよりも下だったならば勝ち目がないというところから言われ始めたことから。表番、下足番(げそくばん)〈履物の番をする人〉、使番(つかいばん)〈使い走り〉などといった仕事を行う者を表す階級を意味する言葉として三下が使われていることもある。

 博徒は階梯的徒弟制度に組み込まれており、下の地位から、三下、出方(でかた)、代貸(だいがし)、貸元(かしもと)の順に序列付けられた。鉄火場の責任者である貸元は盆茣蓙(ぼんござ)〈丁半ばくちで壺をふせる所に敷くござ〉まわりでは中(なか)盆(ぼん)の左隣に座るが、実務を担当するのは中盆とツボ振りである。 暴力団構成員の最下級の若者を「三下ヤクザ」と称するのはここから来ている。

 余談だが、慣用句にうまくいくかどうか分からず、出たとこ勝負でやってみることを「一(いち)か八(ばち)か」と言うが、この「一」と「八」は、それぞれ「丁」と「半」の上の部分を取って作られたという強引で誤った説があるが、「一か八か」と言うのは、元来は「一か、八か、釈迦十か」というカルタ賭博のカブ競技を語源としている。

 小規模な賭場(とば)を鉄火場(てっかば)、大勝負を賭博と呼んで区別した。昔、鉄火場〈賭博場〉で博打をしながら食べられる手軽な食事だったことから、寿司の「鉄火巻」の語源説がある。「鉄火」とは、真っ赤に熱した鉄や、それを叩いた際に出る火花を意味し、転じて博打打ち〈やくざ者〉を「鉄火」「鉄火者」、賭場を「鉄火場」という。

 筆者が、菅原文太任侠映画を観ている時に、文太が「てめえらサンシタは引っ込んでろ!」と言っていたことから「なんだろう?」と思い、今回調べてみた。そして色々調べている内に「鉄火巻」にたどりついたのだ。