ホリショウのあれこれ文筆庫

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第875話 カニではない「タラバガニ」

序文・ヤドカリの仲間

                               堀口尚次

 

 タラバガニ十脚目〈エビ科〉 - 異(い)尾(び)下目〈ヤドカリ下目〉- タラバガニ科 - タラバガニ属に分類される甲殻類の一種。 タラバガニ属はタラバガニを含む5種からなる。

 本種はカニではなく、ヤドカリの仲間である生物部分類学上はカニ下目ではなくヤドカリ下目に分類される〉。ただし、見かけはカニによく似ている。カニの脚は10本だが、タラバガニでは目立つ脚は8本という違いがある。

 水産業・貿易統計等の分野ではカの一種として取り扱われ、重要な水産資源の一種に位置づけられている。

 和名は「たらばがに」、「鱈場蟹」「多羅波蟹」などの漢字表記がある。ほかに、方言として「たらがに」「いばらがに」などがみられる。俗に「カニの王様」とも呼ばれる。

 名称の由来は、生息域がタラの漁場〈鱈場〉と重なることに因(よ)るという。異説として、かつては用途がなく漁村に山積みで放棄されていたことから「殻(から)場」が語源だともいう。タラ漁師が誤って網を海底までおろしてしまい、網を引き上げてみると見たことのないカニが掛かっていたのがタラバガニ漁の起源である、との伝えもある。

 標準和名「タラバガニ」は、和名「たらばがに」を生物学が、学術名として引き継いだものである。「カニ」の名称は学術的には問題があるが、広く普及している通俗名を重視する姿勢をもって、改められることなく採用された。

 塩茹でや蒸し蟹として流通することが多く、缶詰〈身に含まれる硫黄が缶の鉄と化合して黒く変色するのを防ぐために身を硫酸紙で包む場合もある〉にも加工される、いずれもそのまま食べる以外にも様々な料理の材料として、使われる。日本では半透明の生身を刺身で賞味することもあるが、加熱したものより繊維質が強靭で、旨味も薄い。ヤドカリの仲間であることから、ケガニやズワイガニとは違い、カニミソは油分・水分が多く生臭さがあり、通常は食用にされない。