ホリショウのあれこれ文筆庫

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第934話 パンタロンは死語

序文・フランス語でパンツ

                               堀口尚次

 

 ベルボトムとは、衣服のうち、ズボンのデザインの一種。またそのようなデザインのズボンそのものを指す。脚の筒の形が、腰から膝までは身体にフィットし、膝から裾に向かって広がっているものである。金管楽器のベルの形に似ていることから「ベルボトム」と呼ばれている。日本では「パンタロン」や「ラッパズボン」と呼ばれたこともある。丈の長いブーツを下に履けることから「ブーツカット」という呼び方も一般的である。

 現在は裾の広がり方によって区別するのが一般的になっており、やや広がっているものをブーツカット、大きく広がっているものをベルボトムとすることが多い。両者を総称して「フレア」とも言う。着方はとくに決まっていないが、やや丈を長めにして踵の高い靴と合わせるとさらに脚を長く見せることができる。このような着こなしがしやすいよう、裾にスリットが入っていたり、裾をボタンやファスナーで開閉できるものもある。長所として、膝下を長く見せることができる、ある程度脚の体型をカバーできることがある一方、短所として、着用時に裾を引っ掛けたりしやすい、裾を引きずったりして汚しやすいことがある。

 ヒッピー文化と共に1960年代末期より日本でも爆発的に流行した。日本では当時「パンタロン」と呼ばれていたパンタロンフランス語でパンツの意だが、ちょうど日本に「パンタロン」の語が入って来た1960年代末から1970年代にかけて、日本ではベルボトムのパンツが大流行していたため、「パンタロン」は日本でベルボトムを指す語として定着した。現在では廃語〈俗に言う「死語」〉と化している。

 その後1980年代にはスリムジーンズの流行に置き換わったが、1992年頃からの古着ブームによりベルボトムが再び流行するものの数年で沈静化した。

 ベルボトムの発祥はヨーロッパ諸国の大工職人や、19世紀のアメリカ海軍の水兵である。1960年代以降、アメリカのヒッピー文化の代表的なファッションスタイルの一つとして定着し、1970年代後半まで、男性・女性を問わず世界中の若者の間で大流行した。なお、単にジーンズだけでなく、プレスラインの入ったスラックス型やプリント柄のものも多かった。エルヴィス・プレスリーはジャンプスーツにベルボトムを採用していた。