ホリショウのあれこれ文筆庫

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第1087話 総会屋

序文・株主総会の舞台裏

                               堀口尚次

 

 総会屋とは、日本において株式会社の株式を若干数保有株主としての権利行使を濫用することで会社等から不当に金品を収受、または要求する者および組織を指す。別名として「特殊株主」「プロ株主」などがある。英語に翻訳する際は「違法行為で金もうけをする人」「ゆすり・たかりを働く人」を意味する "racketeer" を代用するなどの用例がある。

 総会屋は、その名のとおり、株主総会の活性化を阻害する存在であるが、昭和56年、平成9年の2度の商法改正により、その活動が従来より制約された。2006年5月1日に施行された会社法では、株主の権利の行使に関する利益の供与として規制されている。企業の株を保有して株主総会で質問などをし、コンサルタント料や雑誌などの購読料などで企業から金銭を受け取る。大きく分けて2種類存在し、少しの株式を持って会社にとって不利益な発言をするもの、企業が報酬を支払い、ほかの株主を威圧して発言をできなくさせて不当に利益を得ようとするものに分けられる。

 弁護士の花井卓蔵は大正初期、買占め等により会社の支配権を争奪する事例が増えた実務界で攻防両者とも法理論と実務に通じた総会協力者が必要になると考え、久保祐三郎に総会運営を研究するように勧めたと言われる。同時期に洲崎の武部申策は郷誠之助が用心棒を依頼した事を端としてガス、電力会社の総会に自ら足を運び、又は自分の影響下にある田島将光のような人間を出席させている。森川哲郎『総会屋』によると当時の総会屋は業界全体でも150人程度しかおらず会社も儀礼の金銭を渡すだけだったとされる。

 世間の注目を浴びたのは財閥解体後で「白木屋」騒動、「東洋電機カラーテレビ事件」、近江絹糸総会は総会と同様裁判の行方が関心事とされた。御家騒動、乗っ取りなどの事件に介入して知恵を授けたり裏面工作をする黒幕としては戦前からの「大物」として久保、田島の名が高く久保の没後は右翼の児玉誉志夫に師事する一派が台頭したとする説がある。昭和35年代より小川薫や論談同志会など暴力的な広島グループが世間をにぎわせた。

 また総会屋の用心棒として周辺にいた暴力団が次第にノウハウを吸収、構成員や関係者を総会へ進出させた結果昭和45年代の最盛期にはプロ株主の大部分が暴力団関係者とされた。