序文・飲み屋
堀口尚次
ノミ屋とは、日本に於ける公営競技などを利用して私設の投票所を開設している者のことである。また、その行為をノミ行為と言う。
たとえば知人からお金を渡され、これである馬の馬券を買ってくれと頼まれたとする。頼まれた側が正規の馬券を購入すれば問題ないが、渡されたお金を馬券購入にあてず飲食などに消費して、万一的中したら配当金を自腹で払うこともできてしまう。この行為を「馬券を飲む」と表現し、これが業(なりわい)として常態化したのが「ノミ屋」である。
日本の公営競技では配当金の決定にパリミュチュエル方式〈投票券の総売り上げをプールし、興行主はそこから一定割合を差し引き、残りの金額を勝ち投票券に配分する方法〉が採用されており、控除率が概ね25パーセント前後に設定されている。日本中央競馬会など主催者は売上から25%程度を控除として差し引き、賞金や開催費用、人件費、設備費、国への納付金を支払い、残った75%は客への配当に充てられるが、私設のノミ屋は賞金や開催費用などの経費を払う必要はない。そのため日本中央競馬会などの主催者より控除率を下げることができる〈「落ち」と言い、10%が多い〉。つまり客は正規の馬券よりも約1割増の配当を受け取れる〈こういったメリットがなければ法的なリスクのあるノミ屋を使う理由はない〉。また、正規の施設〈競技場や場外馬券売り場〉まで行かずとも賭けをすることが出来る手軽さもある。
また、「タネ銭がないときに立て替えてもらえる」「当選金は即日支払うがタネ銭の集金は次週まで猶予する」などの個別サービスをすることによって客を集める。例えば「ハズレ券の購入金額の10%を払い戻す」といった、特別なサービスを行っているノミ屋は少なくないという。
近年では三連単など高額配当が出る可能性のある投票種別が数多く登場している関係で、多くのノミ屋では購入できる投票券の種別を制限したり、「配当金の上限は100倍まで」などの制限を設けて対策している模様である。ノミ屋の収入は、すなわち日本中央競馬会など主催者の売り上げの減少となり、それは国や地方公共団体への納付金の減少となる。また、ノミ屋は暴力団の資金源でもある。したがって日本ではノミ行為は法律で厳しく禁じられている。