序文・愛の鐘
堀口尚次
ベルマーク運動は、学校や教育施設、公民館などをはじめとする生涯学習施設の教育環境整備への助成と、交通などの面でハンデキャップのある山間・離島〈いわゆるへき地〉の学校や特別支援学校、院内学級や被災校、開発途上国の教育に対する援助を組み合わせて行われる運動である。朝日新聞社創立80周年記念事業として昭和35年に始まった。ベルの形は「国内外のお友達に“愛の鐘”を鳴り響かせよう!」との意味合いがある。
商品の包装紙やパッケージにつけられた「ベルマーク」を切取り、学校・団体ごとに集めて財団に送ることにより、1点あたり1円がそれぞれの団体のベルマーク預金になり、貯まった預金で自分の学校・団体の設備品などを購入できる。貯まったポイントで商品と交換すると勘違いされることがあるが、あくまでも預金で購入するシステムである。さらに、この設備購入代金の1割がPTAからの寄付金となり、僻地にある学校などの援助に役立てられる。
1990年代後半から、バブル崩壊に加え、教育施設の設備の充実や少子化が進んだことから、協賛会社の撤退が相次ぎ、運動は弱体化したが、2007年から再びマークの年間集票点数は増える傾向にある。2006年には大学や短期大学などこれまでPTAがなかったため参加できなかった学校や、公民館や生涯学習センターなどの社会教育施設にも参加資格が拡大された。また点数収集についても、リサイクル教育を兼ねた方法として、エプソン、キヤノン、ブラザーのプリンターの使用済み純正インクカートリッジ、トナーカートリッジと交換したり、テトラパック製の乾かした紙パックと交換でベルマーク点数証明書を付与したりしており、web店舗での商品購入などネット販売でマークを提供するスマイルピースが協賛し、広がりをみせている。一方、援助の面では1998年からベルマーク預金を直接援助資金に寄付することができる友愛援助の制度ができ、日本国外や災害も対象になっている。
『教育設備は公費で購入するのが本来の姿であり、ベルマークやPTA会費で購入するのは、決して教育のためにならないと思う。表面的には学校や子供たちの為になっているように見えるが、「義務教育は無償とする」という憲法の精神を活かす努力をすることなく、労力奉仕でまかなおうとするPTAの姿は、大きく後退した考えであろう。』という意見もある。