ホリショウのあれこれ文筆庫

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第560話 厄年と還暦

序文・日本の風習

                               堀口尚次

 

 厄(やく)年は、日本などで厄災が多く降りかかるとされる年齢である。科学的な根拠は不確かで、陰陽道由来とされるものの出典は曖昧である。平安時代の書物には見られ、旧来から根強く信じられている風習である。

 一般的に男性と女性で異なり、本厄は男性が数え年で25歳、42歳、61歳、女性が19歳、33歳、37歳とされている。特に男性の42歳、女性の33歳は大厄と呼ばれ、凶事や災難に遭う率が非常に高く十分な警戒を要するとされる。父親が42歳の時に数え歳2歳の男児は四二に二を加えると「四四〈死死〉」になることから、「四十二の二つ子」として親を食い殺すと迷信されて忌み嫌われ、仮に一度捨てて他人に拾わせて育てるなどの風習があった。いずれの厄年も前後1年間に、厄の前兆が現れるとされる前厄年、厄の恐れが薄らいでいくとされる後厄年、の期間があり、本厄と同様に注意を要するとされる。本厄の年に「厄払い」や「厄除け」を受け、神仏の加護を得て凶事や災難を未然に防ぐ慣習がある。厄年の数え方や行事は地域や寺社ごとの差異も大きい。通常は厄年の年齢に数え年を用いるが、川崎大師などは数え年ではなく満年齢で厄年を計算する。地域や宗派などにより61歳の還暦を男女共通で厄年とする場合や、神社により大厄のみに前厄、後厄を設け、小厄〈大厄以外の本厄〉は設けない場合がある。風習として様々な地方で幅広く根付いており、厄除け参りや地域の行事として祭礼のように祝う事例もみられる。広義の厄年に七五三を含める地方は、男性女性ともに厄年の最少年齢は3歳〈数え年〉である。厄年の数え方も、25歳を「五五の厄年」など掛け算にするなどの風習もある。

 還暦とは干支(えと)〈十干(じっかん)十二支(じゅうにし)〉が一巡し誕生年の干支に還ることであり、満60歳〈数え年61歳〉のことである。人の年齢を表す場合が多い。本(ほん)卦(け)還(かえ)りとも表現する。年齢は昭和30年過ぎまで「数え何歳」と表現されていた。数え年において年齢を加算する際の元日は太陰太陽暦1月1日〈旧暦〉だが、昭和30年当時でも西暦の元日に「年を一つ重ねる」ことは定着しつつあったからか現在では還暦・古希など賀寿を太陽暦に基づく数え方をする人が多く、数え年より満年齢を用いることが多い現在では還暦祝いを満60歳誕生日頃に行うことが増えつつある。