ホリショウのあれこれ文筆庫

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第625話 指名打者の賛否

序文・職業野球

                               堀口尚次

 

 指名打者とは、米国メジャーリーグの公式ルールや日本の公認野球規則などにもとづき、野球の試合において攻撃時に投手に代わって打者に立つ、攻撃専門の選手のことをいう。DHともいう。

 指名打者は守備位置に一切就かず、本来投手が担うべき打撃を代行することで投手と攻守を分担する。したがって、DHは野手には含まれず、守備位置〈ポジション〉でもない。なお、後に米国のメジャーリーグベースボールでは先発投手とDHの兼任が可能となるルールも導入されている。

 プロで採用される投手は、高校時代には打撃でも中核を担った経歴を持つ者が少なくないが、プロ入り後は、大谷翔平など野手と兼任する場合を除き、投手に専念することがほとんどである。投球に必要な体力を温存するために、打席ではバットを振らない、死球を避けるため、ホームベースから離れて立つよう投手コーチから指示を受けることがある。

 DH制度が導入されると、打力が期待できない投手を打順に組み入れる必要がなくなったため、切れ目のない攻撃的な打順を組むことができるようになった。

 同時に、打力は高いが守備に難のある野手を1人、DHとして先発出場メンバーに追加できるようになった。この結果、投手が打席に立たない分、野手全体の打撃成績を伸ばすことが可能になった。

 また投手にとっても、好投を続けている時に、やむを得ず試合展開により代打を送られてしまい交代させられるというケースがなくなった。また、投手が打席の準備および立つ必要がなくなったため、味方の攻撃中に休ませることが可能になった。さらには、自打球、死球、走塁時の肩の冷え・スライディング・ベース角による捻挫など、打者や走者の役割から生じうる故障および体力の消耗などを未然に防止できる効果があり、投手にとっても好ましい制度である。

 DH制の賛否ついてはOB選手などがそれぞれ見解を示しており、概ね否定寄りの賛否両論となっている。この制度に対する批判として最も大きな論は、それが打って・守って・走って」という野球本来の姿をゆがめているというものである。