序文・公職選挙法の盲点
堀口尚次
泡沫候補とは、当選する見込みが極めて薄い選挙立候補者。特殊候補、インディーズ候補とも呼ばれる。「沫」が常用漢字に含まれないため、新聞などでは泡まつ候補とまぜ書きしたり、泡末候補と書き換える場合もある。
「立候補しても泡のように消えてしまい落選する候補」という意味からつけられており、候補として立候補する以外に、政治的活動があまり注目されない場合にそう呼ばれることが多い。
選挙に立候補しても法定得票数未満となったり、供託金制度のある国家では、供託金没収点未満となる事例が大半である。それでも選挙活動を通して、名前や顔・公約・政治信条などを知ってもらい、知名度を上げることなどが、立候補者にとってのメリットとなる。
ただし、最初は泡沫候補と呼ばれていても、選挙活動を通じて大きく注目されて、有力候補になったり選挙に当選したりする事例も稀に存在する。特に有力な現・前職のいない選挙や、長く無投票当選の続いた選挙など、波乱の起きやすい状況で予期せぬ善戦・当選が見られる。逆に、かつては大物政治家であった人物でも、曲折を経て当選の見込みが極めて薄くなっている場合には「泡沫候補」と呼ばれることが日本では地盤〈後援会組織〉・看板〈知名度〉・鞄〈資金〉の三バンがそろっていない候補者ほど泡沫候補と呼ばれる傾向がある。また当選以外の目的で、あえて泡沫候補となる者もいる。
1960年4月の栃木県の桑絹村における村長選挙では分村を巡って村長派と対立した陣営が大量立候補をしたため、計202人が立候補する事態が発生した〈1962年の法改正以前は町村の首長選挙の供託金は不要であった〉。
定数1人あたりの有権者数が最大の東京都知事選挙においては、全国的に注目されることによる宣伝・売名効果もあり、その殆んどが落選および供託金の没収を覚悟した泡沫候補で占められる。近年では1991年に16人・1999年には19人・2007年には14人・2014年には16人・2016年には21人・2020年には22人の候補者を数えた。
そして2024年東京都知事選挙では計56人が立候補、さらには想定されていなかった選挙ポスターや政見放送の問題も噴出し、公職選挙法の見直しが議論されるようになった。