ホリショウのあれこれ文筆庫

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第383話 河村名古屋市長の視点に疑問符

序文・首長は大統領?!

                               堀口尚次

 

 名古屋駅東口の一角に、ナスやピーマンなどの野菜が植わっている光景に注目が集まっていた。「駅前で野菜?」「誰が食べるんだ」――。SNSでも話題になっていたが、ある日、こつぜんと姿を消した。

 名古屋市によると、野菜を植えたのは市内の70代男性。「環境美化のため」だったらしい。市有地に無断で植えられていたため、市は6月上旬に撤去を求める看板を設置した。ただ、事態を知った河村たかし市長が「かわええじゃないすか。ええと思いますよ」。鶴の一声を受け、市は撤去をすぐには求めず、男性と話し合いながら対応策を模索することにした。

 野菜が植わっていたのは道路脇などにある「植樹帯」で市道の一部だ。草花が植えられている光景は多く見かけるが、野菜はなぜダメなのか。中部地方の国道を管理する国土交通省中部地方整備局によると、許可を得ずに道路上で土を掘ったりする行為は交通に支障が出る場合があり、道路法に抵触する可能性があるという。市によると、同じような市有地で草花を植えているケースもあるが、事前に団体や個人が市と協議して、通行の妨げにならないなど市のルールに従ってもらった上で植えているという。ただ、植樹帯に野菜を植えること自体については法律に記載がなく、「想定外の行為」と市や中部地方整備局の担当者は口をそろえる。市はこれまで「野菜を植えたい」という申し出があっても断ってきた。

 河村市長は、「鶴の一声」で行政を牛耳っているつもりだろうか?何か論点がずれている様に思えてならない。一義的な問題は「市有地を無断で使用したこと」なのである。まずは、今回の当初の行政の対応〈市有地の無断使用で野菜苗を植えた人へ撤去の看板を建てた〉を当然の行政指導であり、そのことを肯定した上で、自分の考え〈野菜苗が植えてあってもいいじゃないか〉を提案すべきだったと思う。そもそも議会制民主主義に「鶴の一声」なんてあっていいのか。市職員の方々からすれば、河村市長は究極の上司であることにかわりないが、その「上司の顔色を伺う仕事」を象徴するような事案になった。

 結局、無断で野菜苗を植えた男性が撤去したが、市側としては今後はその場所で野菜苗を植えていく計画のようだ。河村市長は大統領と同じで直接選挙で選ばれた権力の持ち主だが、首長(くびちょう)としての采配を間違えてはなるまい。