序文・住所の番地から
堀口尚次
KURE 5-56は、呉工業が製造販売している浸透潤滑剤、およびその商品シリーズの名称である。開発元は、アメリカ合衆国の自動車関連および生活関連用品企業、CRCインダストリーで、内容物は同社の「CRC5-56」と呼ばれていた製品と同様であり、ブランド表記が「KURE CRC5-56〈クレ・シーアールシー・ご・ご・ろく〉」となっている商品もある。日本へは1962年10月に導入。
CRC社創立時の所在地番号〈住所の番地〉が1-16であった事から最初に開発された製品を1-16、2番目が2-26という品名になり、5番目に開発されたため5-56となった。
使用すると金属表面に薄い皮膜を作り、潤滑効果、防錆効果を生む。また固着したネジなどの微細な隙間に浸透して古い油脂を溶かし、緩めやすくする。有機溶剤の割合が高く、蒸発残留分は非常に少ないので長続きする潤滑効果は期待できない。これを利用して機械からのきしみ音の音源を探すのに使われる場合がある。
臭いの気になる室内、自動車内での使用を想定した無香性のものもあり、ゴム、プラスチックにも使用できる。
テレビCMなど一般向け販売促進では多くの機械に対して汎用的に潤滑、防錆、錆取り、防湿、洗浄用途として5-56で対応できるとしている。5-56が適さない用途としては、車軸等のベアリングのような耐久性のあるグリースを必要としている部位には向かず、不用意に使用すると元々あった潤滑油を溶剤が流してしまう。内部構造が複雑な玄関の鍵穴への使用は、潤滑剤がホコリを溜め込むことで鍵穴が動作不能になってしまう。また、ミシンやオートバイのチェーンには潤滑効果が持続しないため不向きである。そのため、呉工業でもそれぞれ5-56以外の対応製品を用意している。研磨剤が入っているという噂は否定されている。石油系溶剤を含んでいるため、無溶剤である無香性タイプを除きゴムや樹脂類であるプラスチック、塗装面を溶かして汚れがこびりついて傷めるため、注意が必要である。
【私見】筆者は長年ホームセンターに勤務したが「CRCクレ556」は売れ筋商品だった。呉工業が自動車関連商品を多く発売していることもあってか「カー用品のくくり」で販売されていたが、工業用・工具用需要の方が大きかった。