序文・仁義を欠いちゃあいられやしない
堀口尚次
儒教は、孔子を始祖とする思考・信仰の体系。紀元前の中国に興り、東アジア各国で2000年以上に亘り強い影響力を持つ。その学問的側面から儒学、思想的側面からは名教ともいう。大成者の孔子から、孔教・孔子教とも呼ぶ。中国では、哲学・思想としては儒家思想という。
中国やその周辺の東アジア諸国で信仰・研究されていた宗教、または学問。一般に孔子が創始者と目されるが、古代から伝わる神話や制度、習俗などの集合体である。孔子以後は経書の解釈を行う学問、または社会規範や習俗として行われた。
儒教は、五常(ごじょう)〈仁・義・礼・智・信〉という徳性を拡充することにより五倫〈父子・君臣・夫婦・長幼・朋友〉関係を維持することを教える。
「仁」
人を思い遣(や)る事。白川静『孔子伝』によれば、「狩衣(かりぎぬ)姿も凛々しい若者の頼もしさをいう語」。「説文解字」は「親」に通じると述べている。
「論語」の中では、さまざまな説明がなされている。孔子は仁を最高の徳目としていた。
「義」
利欲に囚われず、すべきことをすること。
「礼」
仁を具体的な行動として、表したもの。もともとは宗教儀礼でのタブーや伝統的な習慣・制度を意味していた。のちに、人間の上下関係で守るべきことを意味するようになった。
「智」
ただ学問に励むだけでなく道徳的認識判断力であることともされている。智は『論語』では知と表記され意味としては聡明、明智などの意味がある。
「信」
言明を違えないこと、真実を告げること、約束を守ること、誠実であること。
この他にも、「忠義」「孝」「悌」という教えもある。江戸時代後期の長編小説「南総里見八犬伝」に出てくる「仁義礼智忠信孝悌(じんぎれいちちゅうしんこうてい)」である。