序文・自衛官の最高位者
堀口尚次
統合幕僚長は、統合幕僚監部の長であり、自衛官の最高位者。階級は陸将、海将または空将のいずれか。陸上幕僚長・海上幕僚長・航空幕僚長とは兼任せず、慣例的に陸上幕僚長、海上幕僚長または航空幕僚長の中から持ち回りで選出・任命される。警察庁長官および各省事務次官と同等の政令指定職8号。
陸海空自衛隊の運用に関し一元的に防衛大臣を補佐し、統合幕僚監部の所掌事務に係る大臣の指揮命令は、全て統合幕僚長を通じて行う〈統合幕僚監部の所掌事務に係らないものは、陸海空各幕僚長を通じて行う〉。部隊運用に際しては、フォースプロバイダー〈練度管理責任者〉の陸上幕僚長、海上幕僚長、航空幕僚長から提供された各自衛隊の部隊を、自衛官最高位のフォースユーザー〈事態対処責任者〉として、陸自の陸上総隊司令官や方面総監、海自の自衛艦隊司令官や地方総監、空自の航空総隊司令官に大臣の命令を執行することになる。共同の部隊や特別の部隊〈統合任務部隊〉への防衛大臣の命令も、統合幕僚長が執行する。また、アメリカ統合参謀本部議長のカウンターパートの役割も果たす。
法形式上は、防衛大臣が指揮命令をし、統合幕僚長は大臣の補佐および命令の執行をするが、実質上は統合幕僚長の指揮と言える。また、統合幕僚長は職務を行うにあたり、陸海空各幕僚長に対し、必要な措置をとらせることができる。
三自衛隊の統合運用の重要性が増してきたことを受けて、平成18年3月27日に「統合幕僚会議」および「同事務局」が「統合幕僚監部」に改編され、統合幕僚会議議長も統合幕僚長となった。それまでは陸・海・空の各自衛隊ごとの運用が基本とされ、統合幕僚会議議長は主に三自衛隊の調整役としての役割をもち、部隊指揮においては陸・海・空の2つ以上の自衛隊が統合部隊を編成したときにのみそれを担っていたが、統合幕僚長への変更に伴って三自衛隊の統合運用が基本となり、常時三自衛隊を統合運用する最高のフォースユーザーとしての立場が明確化された。統合幕僚会議議長は、各幕僚長に対する明確な指揮権は無かったが、統合幕僚長は各幕僚長への指揮権が与えられた。