ホリショウのあれこれ文筆庫

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第1458話 日本で唯一のタブレット通票通過授受

序文・衝突回避のアナロク手法

                               堀口尚次

 

 閉塞とは、鉄道または軌道における衝突を防ぐための信号保安システムのことである。鉄輪で走行する鉄道車両は、ゴムタイヤの自動車より制動距離が遥かに長く、前方に別の車両を発見してからのブレーキでは衝突を防げない。そのため、線路を一定区間閉塞区間に区切り、1つの閉塞区間に複数の列車が同時に入れないようにする

 閉塞の考え方が導入される以前は、列車の出発前に駅同士で連絡をした後、ダイヤグラムに基づく運転時刻表に従って列車を運行させていたが、遅延が発生し所定通り運行できない時や確認に錯誤などがあった際に衝突・追突事故が頻発したため、それを防ぐための方法として閉塞が考案された。

 「タブレット」とは、非自動閉塞方式で用いられる、通行票の役割をするもの。1閉塞区間に1つ1種を定めてこれを持たない列車を閉塞区間内に入れないなどとすることで閉塞を実現する。日本の国鉄では単に「通票」と呼んでいた時代があったが、国鉄分割民営化による鉄道事業法施行以後はその省令により次のように定義されている。材質や形状は法令で統一されておらず、製造メーカーや事業者により異なっている

 日本の多数で使用されたタイヤー式単線用閉塞器では、「タブレット」や「たま」と呼ばれる金属の円盤を用いる。タブレットの中央に空けられた穴の形状で区間を区別する。通票受器やタブレットキャッチャーでの扱いが便利なよう大きな金属製のリングを取り付けていることが多い。金属製リングをも含めて「タブレット」と呼ばれる事もあるが、本来は金属部分のみが「タブレット」である。日本では、JRの旅客営業路線では、2012年9月22日の只見線を最後に使用路線はなくなり、第三セクターでごく一部で使われているのみである。

 愛知県の知多半島にある衣浦臨海鉄道は貨物線用路線だが、JR武豊線に乗り入れており、半田線・碧南線共にタブレット閉塞を導入しており、境界駅の東成岩駅と東浦駅では衣浦臨海鉄道の係員がホームに立ち、日本で唯一の通過中の貨物列車と通票の受け渡しを行っている。東成岩駅ではスイッチバック〈折り返し〉を行う関係で、上り下り共に駅南側にある機回し線に進入する列車に対して受け渡しを行う。