ホリショウのあれこれ文筆庫

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第1560話 秘仏・歓喜天(聖天)

序文・秘仏

                               堀口尚次

 

 歓喜天は、仏教の守護神である天部の一つ。ヒンドゥー教ガネーシャに相当する尊格で、ガネーシャと同様に象の頭を持つ。大聖歓喜天、大聖歓喜双身天王、聖天等とも称される。象頭人身の単身像と立像で抱擁している象頭人身の双身像の2つの姿の形像が多いが、多くは厨子などに安置され、秘仏として扱われており一般に公開されることは少ない。稀に人頭人身の形像も見られる。

 仏教に取り入れられたヴィナーヤカも当初は「障礙(しょうがい)をもたらす悪神」として認識された。『大毘盧遮那成仏神変加持経』入漫茶羅具縁真言品第二余に「彼れ護心を住するによって あらゆる障を為す者 毘那夜迦等の 悪形の諸の羅刹 一切皆退き散る 真言を念ずる力の故に」とあり、一行筆受の『大日経疏』は毘那夜迦を「即ち是れ一切の障を為す者、此の障は皆妄想心より生ず」と解説している。時間が経つにつれて、仏教のヴィナーヤカはヒンドゥー教ガネーシャと同様に最終的に悪神から障害を取り除く仏教に帰依した護法善神へと転じた。護法神であるヴィナーヤカは、ヒマラヤ山脈カイラス山で9千8百の諸眷属を率いて三千世界と仏法僧の三宝を守護するとされる。悪神が十一面観音菩薩によって善神に改宗し、仏教を守護し財運と福運をもたらす天部の神とされ、日本各地の寺院で祀られている。一般的な抱擁している象頭人身の双身像の場合、頭部に冠を付けている方が十一面観音で、その十一面観音に抱擁されながらも足を踏まれている方が毘那夜迦王とされる。

 日本仏教には珍しく、後期密教の無上瑜伽やタントラ教歓喜仏を連想させるような男天・女天が抱擁し合う表現を含むため、双身歓喜天像は秘仏とされて一般には公開されないのが普通である。

 歓喜天の彫像は、円筒形の厨子に安置された小像が多く、浴油供によって供養することから金属製の像が多い。現存最古とされるのは金剛寺高幡不動〉の歓喜天木像だが、かろうじて木像であることがうかがえる程度の状態である。鎌倉市宝戒寺の歓喜天像は高さ150センチを超す木像で、制作も優れ、日本における歓喜天像の代表作といえ、国の重要文化財に指定されているが、秘仏とされ公開されていない。

私見】過日筆者は三重県桑名にある大福田寺・日本三大聖天「通称・桑名の聖天さん」を訪れたが当然御本尊は秘仏だ。珍しい三面大黒天は拝められた。