序文・平和主義を象徴する人物
堀口尚次
モハメド・アリ〈1942年 - 2016年〉は、アメリカ合衆国のプロボクサー、アクティビスト。ケンタッキー州ルイビル出身。元WBA・WBC世界ヘビー級統一王者。
1960年、18歳の時にローマオリンピックライトヘビー級で金メダルを獲得。その後プロに転向し、1964年には当時「史上最強のハードパンチャー」と称されたソニー・リストンを相手に大番狂わせを演じ、22歳でWBA・WBC世界ヘビー級統一王座を獲得した。ジョージ・フォアマンとザイールで対戦し、8Rでの一発大逆転を演じたタイトルマッチや、ジョー・フレージャーとの3度にわたる死闘など、ボクシング史上に残る数々の名勝負を行っている。最終的には、ヘビー級史上初となる通算3度の王座獲得成功と19度の王座防衛に輝いた。このような経歴から20世紀で最も偉大なスポーツ選手とも称される。
黒人解放運動指導者マルコム・Xと出会いその思想に共鳴し、イスラム教に改宗。1960年に勃発し、後にアメリカが本格参戦したベトナム戦争への徴兵を拒否したことにより米国政府と長期にわたって争ったが、最終的には無罪を勝ち取ったことでも知られる。アリの反戦活動は当時の米国政府や保守派との深刻な対立をもたらし、アリは無敗のままWBA・WBC世界ヘビー級統一王座とボクシング・ライセンスを剥奪され、3年7か月間のブランクを作ったが、復帰後、実力で王座奪還を果たした。また、反戦活動と同時に露骨な黒人差別を温存するアメリカ社会に批判的な言動を繰り返した。その後、反戦活動や公民権運動などへの貢献が称えられドイツの平和賞「オットー・ハーン平和メダル」を受賞するなど、アリは「平和主義を象徴する人物の1人」となった。
ボクサーの他に、アクティビスト、そしてポップカルチャーのアイコンとして、アリは書籍、映画、音楽、ゲーム、テレビ番組などを含む数多くのジャンルで取り上げられてきた。また、アリは「世界で最も有名な人物」と呼ばれることも多く、1974年から1980年にかけて、アリの1試合の視聴者数は推定10億から20億人を記録し、1996年のアトランタオリンピックでアリが聖火台に点火したシーンは世界中で推定35億人の視聴者数を記録した。
