ホリショウのあれこれ文筆庫

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第1589話 おいぬ様を祀る武蔵御岳神社

序文・ニホンオオカミ

                               堀口尚次

 

 武蔵御嶽(みたけ)神社は、東京都青梅市〈旧武蔵国多磨郡〉にある御嶽神社。武蔵御岳山の山上に鎮座する。御岳、御嶽とは修験道の中心地である吉野地方〈奈良県〉の金峯山を指している。蔵王権現櫛真智命(くしまちのみこと)などを祀り、山岳信仰霊場として中世以降発展し、武蔵・相模に渡る信仰圏を獲得した。式内社大麻止乃豆天神社であるという説があり、旧府社である。現在は神社本庁に属していない単立神社である。ご眷属の大口真神(おおくちのまがみ)おいぬ様〉も祀っていることから、祈願のため犬を連れた参拝客が近年増えており、御岳登山鉄道は、ケージを用いずに犬を乗車させることができる。崇神天皇7年の創建とされ、天平8年行基蔵王権現を勧請したといわれる。文暦元年に大中臣国兼が荒廃していた社殿を再興し、以降は修験場として知られ、関東の武家政権や武士から多くの武具が奉納される。江戸時代には、慶長10年に大久保長安を普請奉行として本社が、元禄13年には幣殿と拝殿が建立された。明治に入ると神仏分離によって、それまでの御嶽大権現〈御嶽蔵王権現〉から大麻止乃豆天神社に改称した。これは当社が延喜式に載せられている「大麻止乃豆天神社」に比定されたためであるが、同様に大麻止乃豆天神社であると比定される神社が他にもあったため、御嶽神社と改称した。昭和27年に現在の武蔵御嶽神社に改称した。

 大口真神を祭る。本社玉垣内にあり、神明社の後方に瑞垣に囲まれて鎮座している。御嶽神社の眷属である狼を祀っている。古くは神饌(しんせん)を供える台のみであったが、江戸時代末期に社殿が建てられた。現在の社殿は昭和14年に建てられた一間社流造の社殿で豪華な彫刻が全体に施されている。社殿付近が御岳山の頂上〈標高929メートル〉であり、社殿後方は奥宮遥拝所となっている。

 真神は、狼〈ニホンオオカミ〉の古名や異名、「まことの神」「正しい神」を指す言葉。「大口真神」「御神犬」とも呼ばれる。現在も埼玉県秩父地方の神社を中心に、狼が描かれた神札(お札)が頒布され、信仰を集めている。このすぐ南の武蔵御岳山上の武蔵御嶽神社には『日本書紀』の記述に基づく「おいぬ様」の伝説があり、日本武尊の東征の折、邪神が大鹿の姿で現れたのを神饌で退治したが、その時に大山鳴動して霧に巻かれて道に迷ったのを、そこに忽然と白い狼が表れて道案内をして、無事に日本武尊軍を導いたので、尊は「大口真神としてそこに留まるように。」といったという。