序文・法律のたてつけ
堀口尚次
生産緑地地区とは、都市計画上、農林漁業との調和を図ることを主目的とした地域地区のひとつであり、その要件等は生産緑地法によって定められる。市街化区域内の土地のうち、一定の要件を満たす土地の指定制度〈生産緑地地区制度〉に沿って、管轄自治体より指定された地区を指す。この制度により指定された農地または森林のことを生産緑地と呼ぶ。
昨今、大都市圏など一部地域において都市化が急速に進んでいるが、いっぽう緑地が本来持つ地盤保持や保水などの働きによる災害の防止、および農林漁業と調和した都市環境の保全などのため、将来にわたり農地または緑地等として残すべき土地を自治体が指定することにより、円滑な都市計画を実施することを主目的としている。また、大都市圏の一部自治体においては、生産緑地指定を受けることで、固定資産税課税の基礎となる評価が農地並みになる措置が受けられる措置もある。なお、一旦指定を受けた土地は、一定の要件を満たす場合のほかは原則として解除できない。生産緑地には営農義務が生じるが、実際は耕作していないのに耕作しているようにみせかけ、特典のみを享受する事例が報告されて問題になった。
主に市街化区域内の農地の宅地転用を促す目的で、大都市圏の一部自治体においては、市街化区域内の農地について固定資産税および相続税の課税が宅地並みに引き上げられた。しかしながら、農地や緑地の持つ前述の役割が都市部においても変わるわけではないので、生産緑地地区が誕生した。
当初は条件が厳しかったが、長期に営農することで課税を農地並みにしていた長期営農継続制度が1991年に廃止されることとなり、状況が変化した。このままでは市街化区域農地に対して宅地並み課税が課せられるので、その対策として「生産緑地については農地課税を継続する」こととなり、生産緑地の指定条件も緩和されたため、この制度による指定を受ける農地が増加した。
1991年の長期営農継続制度の廃止とその対策の生産緑地指定条件緩和から30年以上が経過する2022年以降、農家の高齢化・後継者不足による離農により都市部の大量の土地が生産緑地指定を解除され、宅地として不動産市場に流れることで地価が下落・大暴落する懸念が「2022年問題」として論じられている。
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