ホリショウのあれこれ文筆庫

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第695話 国家公務員の鵜匠

序文・1300年の歴史

                               堀口尚次

 

 鵜飼い鵜飼鵜養は、飼いならした鵜を使ってアユなどを獲る伝統的な漁法。中国や日本などにみられる漁法である。また、日本では平安時代から貴族や武士などが鵜飼見物を行ってきた歴史があり、現代でも各地で観光としての鵜飼が行われている。特に岐阜県岐阜市長良川鵜飼が有名である。

 岐阜県岐阜市長良川鵜飼ならびに関市の小瀬(おぜ)鵜飼は、宮内庁式部職である鵜匠によって行われている。鵜匠は岐阜市長良に6人、関市小瀬に3人おり、これらは全て世襲制である。長良川の鵜飼では、1人の鵜匠が一度に12羽の鵜を操りながら漁を行う。

 もともと長良川の鵜飼はその起源を1300年ほど前までさかのぼり、江戸時代は徳川幕府および尾張家の庇護のもとに行われていた。明治維新後は一時有栖川宮御用となるも、明治23年宮内省主猟寮属となった。御料鵜飼は、狭義には毎年5月11日から10月15日まで行われる漁のうち特に宮内庁の御料場で行われる8回の漁を指す。御料鵜飼で獲れた鮎は皇居へ献上されるほか、明治神宮伊勢神宮へも奉納される。

 長良川鵜飼とは、岐阜県岐阜市長良川で毎年5月11日から10月15日まで行われる鵜飼である。中秋の名月と増水時を除く毎夜行われる。中秋の名月に行われないのは、篝火(かがりび)で驚かせた鮎を捕らえる鵜飼では、「月が明る過ぎると篝火の効果が薄れるため」といわれることもあるが、他の満月の際には催されるので、これは伝統的な公休と言える。

 正倉院所蔵の大宝年間の戸籍から、1300年以上前、既に鵜飼いを生業とする集団が美濃国に居たと推測されている。起源は漁としての鵜飼だが、現在は古典漁法を今に伝える観光及び文化・宗教的行事としての鵜飼である。そのうち宮内庁の御料場で行われる8回の鵜飼は「御料鵜飼」と呼ばれ、獲れた鮎は皇居へ納められる。

 長良川における鵜飼は日本で唯一皇室御用の鵜飼であり、長良川の鵜匠は職名を宮内省式部職鵜匠といい、長良川の鵜飼用具一式122点は国の重要有形民俗文化財長良川鵜飼漁法は岐阜県指定重要無形民族文化財である。